再生エネ売買、 民間主導でITで効率化

企業間でIT(情報技術)を活用し、再生可能エネルギーを効率よく取引できる仕組みが動き出す。富士通や大和ハウス工業が参加する再生エネの業界団体などが近く取引システムの基盤を立ち上げる。既存の取引制度に比べ再生エネの調達方法などを一覧して比べやすく安価で取引できる可能性がある。民間主導で再生エネの普及を後押しする。

企業に環境配慮などを求める「ESG投資」の動きが広がる。欧州や米国などでは事業活動で使う電力すべてを再生エネでまかなうことを目指す国際的な企業連合「RE100」の活動が活発で、調達コストの低減につなげている。日本でも再生エネを購入したい企業は増えているが、IT活用が遅れ非効率さが残っていた。

新たな取引システムは、RE100に連動した活動を推進する民間団体「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」(JCLP)が主導する。リコー、NTTファシリティーズなども加わり、10月上旬に立ち上げる。

再生エネを調達したい企業と発電事業者の双方に企業情報や事業情報を登録してもらう。基盤技術には暗号資産(仮想通貨)に使われるブロックチェーン(分散型台帳)を使い、電力の購買履歴や企業情報を安全に管理できるようにする。需給に応じ取引してもらう。

購入したい企業は複数の事業者や調達方法を一覧で比べ、複数の事業者からまとめて調達ができる。発電事業者側は再生エネ利用に積極的な企業を見つけ、取引を安定化できる可能性がある。登録や取引に伴う費用はかからない。

現状では日本卸電力取引所(JEPX)内の「非化石価値」の取引市場があるが、再生エネを購入したい企業は発電事業者を探し個別に契約を結び調達する手間がかかる。思うように電力を手配できないこともあった。

新たな仕組みでは参加企業が増えるほど電力の調達コストの低減につながり、効率も高められる。JCLPは企業同士の情報交換などを通じ、事業面での協業など連携の幅を広げたい方針だ。

JCLPにはイオンや佐川急便、村田製作所など大手企業を中心に110以上の企業・団体が名を連ねている。自前での再生エネの調達が難しい中小企業や自治体の参画も募り、5年間で1万社・団体の登録を目指す。

政府は2018年7月に定めたエネルギー基本計画で、再生エネが電力に占める比率を現在の約15%(水力含む)から30年に22~24%まで高めようとしている。

再生エネ普及には課題もある。九州電力は18年10月から太陽光発電の出力制限を実施し、発電事業者が電力を供給できない事態も発生した。再生エネを普及させるためには、送電網の拡充などのインフラ構築、電力大手が送電線の空きを開放するなどの環境整備も重要になる。