発電した電気を一定の価格で買い取る制度を追い風に普及が進む太陽光発電で、耐用年数を過ぎたパネルが新たな環境汚染を引き起こす恐れが出てきた。パネルには鉛などの有害物質も含まれているが、廃棄方法に関するルールはないためだ。環境省は今後予想される大量処分に備えて、撤去や廃棄の方法を定めたガイドライン(指針)作りに乗り出す。
処理方法や再資源化への問題点などを議論する検討会を8月2日に設置する。環境省のほか経済産業省、大学教授らで構成し、下部組織となるワーキンググループにはパネルメーカーや施工業者も参加する。今年度内をめどに指針をまとめる。
2012年7月に始まった固定価格買い取り制度を受けて、各地でメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設が進んでいる。屋根に取り付けて自宅の電力を賄い、余った電力を売る家庭も増えており、資源エネルギー庁によると既に100万世帯を超えている。
太陽光発電パネルの耐用年数は一般に20~25年程度とされる。日本では1990年代から普及が進み、15年ごろからは加速度的に廃棄が進む。環境省の推計によると、30年には年間で35万トン程度の発電設備が「ごみ」となる見込み。
環境省は特に家庭向けの設備を廃棄する際、経験の浅い業者が解体を手掛けると、問題が生じる恐れがあるとしてあらかじめ対策を講じることにした。
ガイドラインに盛り込むのは、住宅の屋根に設置してあるパネルを撤去する具体的な方法や、ガラスや金属などリサイクル可能な材料の取り外し方、再利用が難しい部材の処分の仕方など。解体業者などを対象にアンケート調査をして、粉じんの発生量など作業上のリスクを調べた上で、安全な処理に必要な費用も割り出す。
パネルの解体実験を通じ、ガラスなど再利用可能な資源の価値も算出する一方、有害物質の種類や含有量なども分析する。パネルを埋め立て処理した場合の環境への影響を把握するため、溶出試験も実施する。
「消費者は購入時点では処理費用まで見込んでいない」(廃棄物・リサイクル対策部)ということもあり、処理費用の負担方法についても研究していく方針。回収、処理をメーカーに求めている欧州での例などを参考にしながら、将来的には適切な処理を推進するための法制度化も視野にいれる。(1)メーカーが販売価格に上乗せ(2)消費者が前払いで負担――などの方法を検討していく。