公益財団法人のかずさDNA研究所(千葉県木更津市)は農地の上に設置しても農作物の成長をほとんど妨げない太陽電池の基礎技術を開発した。日光のうち青や緑に相当する波長の短い光で発電し、農作物の成長に必要な波長の長い光は通す。3年以内にビニールハウスなどで使えるフィルム状の電池を開発し、農地での太陽光発電を促したい考えだ。
開発した太陽電池は半透明で、ガラスの間に2種類の電極や電解液が挟まった構造。電極の表面に付着した色素分子が、青や緑に相当する400~600ナノ(ナノは10億分の1)メートルの波長の光を吸収して発電する。赤など波長が長く植物が成長するのに必要な光は通す。
かずさDNA研は植物遺伝子の研究などで多くの実績がある。新しい電池に使う色素を植物から見つけた。
一般的な太陽電池は発電効率を高めるため、すべての波長を発電に使おうとする。農地を太陽電池で覆うと、農作物に日光が届きにくくなり収量が落ちてしまう可能性がある。かずさDNA研は太陽電池が吸収する波長を絞り込み農作物の成長を妨げないようにした。
ガラス製のままでは農地で使いづらいため、桐蔭横浜大学と組んでビニールハウスに取り付けやすいフィルム状の太陽電池を開発する。太陽電池を植物の上に設置し、成長に及ぼす影響を詳細に調べる計画だ。
農業法人などは農作物の売り上げに売電収入が加われば経営が安定する。農林水産省の3月末の規制緩和で、農地で太陽光発電ができるようになった。このため農業を営みながら太陽光発電で売電収入を得る「ソーラーシェアリング」に取り組む農家が増えている。新技術を実用化できればソーラーシェアリングの普及に弾みがつきそうだ。
日本経済新聞