ソフトバンクは電力小売事業に参入する。今春から大口顧客の企業向けを始め、電力小売りの全面自由化が予定される2016年には一般家庭向けにも販売する。同社は携帯電話などを中心に約5000万件の顧客を抱えており、通信サービスとのセット割引なども検討する。通信業界の価格競争を主導してきた同社の参入で電気料金の引き下げが進みそうだ。
政府の電力システム改革で16年に全面自由化されると、消費者は全国から自由に電力会社を選べるようになる。都市ガス、商社や通信など異業種の参入が相次ぐ見通し。ソフトバンクは太陽光発電などに大型投資を実施しており、異業種で最大シェアの獲得を狙う。
同社は今春、新電力(特定規模電気事業者)事業に参入し、企業の大口需要家向けの販売を始める。ソフトバンクの自然エネルギー子会社のSBエナジー(東京・港)が全額出資するSBパワー(同)が、経済産業省に新電力として届け出た。
ソフトバンクは太陽光など再生可能エネルギーで発電する電気を主力として販売する。再生可能エネを購入したい消費者のニーズを取り込む。
同社は1000億円規模を投じ15年度末までに約29万キロワットの大規模太陽光発電所(メガソーラー)や風力発電所を建設する計画。他社と建設を検討中の北海道の風力発電所などを含めると、90万キロワット規模と国内最大級の再生エネ事業者になる。他社からも電力を購入する。天然ガス火力発電所の建設も視野に入れる。
家庭向けでは携帯電話や、グループの「ヤフーBB」の固定光回線の契約とのセット割引を検討する。ソフトバンクグループの国内の通信系の顧客基盤は携帯電話を中心に、約5000万件。通信料金の課金システムを使い電気料金を請求できることも強みとなる。通信業界では同社の参入により携帯電話やブロードバンドなどで価格競争が激化し、利用料金が低下してきた。電気料金についても業界内の競争を引き起こす可能性がある。
東日本大震災後の電気料金の上昇を受けて、地方自治体や企業が各地域の電力大手に比べて1割程度料金が低い新電力からの調達に切り替える例が増えている。
新電力ではNTTグループや東京ガスなどが出資するエネット(東京・港)が5割のシェアを持つ最大手で、顧客を拡大している。CATV最大手のジュピターテレコムは、現段階でも販売できるマンション向けに電力とのセット割り引きを提供している。