東芝は、有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率において、1cm角の単層セルで世界最高レベルの11.2%を、5cm角のモジュールで世界最高の9.9%を達成した。これにより低コスト、薄型、軽量の有機薄膜太陽電池の本格的実用化に一歩近づいたことになる。同社は今後、発電コストをさらに低減するため、変換効率の向上、耐久性の向上及び製造コストの低減に向けた研究開発を進めていく。
なお、同技術の詳細は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「太陽光発電システム次世代高性能技術開発」の成果として、7月29日に東京ビッグサイトで開催された「再生可能エネルギー2014国際会議」で発表された。
近年、太陽光発電導入量の大幅な増加に伴い、太陽光の固定買取価格の引き下げも議論されており、太陽光発電コストの低下が強く望まれている。また、現在主流のシリコン系太陽電池は、重量と形状の面から設置場所が限られていた。これらの課題を解決できる技術として、低価格で大量生産が可能、かつ軽量でフレキシブルな特長を持つ有機薄膜太陽電池の実用化が期待されている。その一方で、有機薄膜太陽電池はエネルギー変換効率が低く、実用化には13%を超える効率が必要とされている。
今回、セル構造として「逆構造」と呼ばれる安定性に優れる構造を採用し、同社が独自開発した長波長P型材料の改良品を適用することで、セルのエネルギー変換効率の向上を実現した。また、このセルに膜厚がナノスケールの多層膜を均一かつ高精度にパターン形成できる独自の「メニスカス塗布技術」とモジュール構造の最適化を可能にするシミュレーション技術を適用することで、高いフィルファクター(太陽電池の電流電圧特性の良さを表す指標)を示す世界最高のエネルギー変換効率のモジュールを開発した。