堤体とはダムの水をせき止める部分のことで、建造にいくつかの形式がある。同ダムは岩石を積み上げて造るロックフィルダム形式となっており、下流側の法面に約22度の緩やかな傾斜がついている。このスペースが南に面していることから太陽光発電に適していた。
また傾斜面にソーラーパネルを平行に配置することでパネルによる影の影響も最小限に抑えられ、平坦地に比べ1.2倍多く設置できるメリットもあった。設置面積は1.9ha、発電出力1760kW、予想発電電力量を一般家庭約540世帯分の年間使用量に相当する約190万kWh/年と見込んだ。
発電設備の建設費は7億円強。電力は固定価格買取制度により1kWhあたり36円で売電され、買い取り期間の20年間で約15憶円の収入を予定する。これに対し維持管理費は11.7億円と見積もっており約3.3億円が収益となるもよう。ダム堤体面の利用は国内初。
権現ダムは加古川市の北部にあり82年3月に工業用水の安定供給のために建設され、第1ダムから第3ダムまで3ヶ所のダムからなり、太陽光パネルを設置したのは最も大きい第1ダムで堤高32.6m、堤頂長357.4m。ダム全体の湛水面積は約1平方km、貯水量1100万トンの規模となっている。
県企業庁は「ダムという既存の資産を本来の目的を損なわない範囲で太陽光発電所として整備し、その収益を施設整備や老朽化施設の更新などに充てることで工業用水道事業の経営向上に役立てることができる」とする。またダムの堤体の利用についても、新たに大規模な開発や造成を必要としないため自然環境に与える影響を抑えられ、傾斜面に設置したソーラーパネルは周囲に反射障害をおこさないという。
全国には同形式のダムが300以上
県はこのほかにも15年の運転開始をメドに加古川市の平荘ダムと、姫路市の神谷ダムで堤体を利用した太陽光発電を行う計画。このうち平荘ダムは粘土や土を盛り上げたアースダム形式で、南向きの堤体が18~26度の傾斜面となっており、これを利用し約5億円をかけて発電出力約1200kW、年間発電量約132kWhの発電設備を建設する予定だ。
1kWhあたり36円で売電し、20年間で約10.8億円の収入を見込む。発電設備の維持管理費を8.1億円と見積もり、2.7億円の収益を予想している。なお、日本ダム協会によればロックフィルダム形式のダムは全国に304カ所、アースダム形式のダムは同1205カ所あるという。